今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
学校に通うことも叶わず、長い入院生活を送っているなんて不憫でならない。
(十代後半の楽しい時期を、彼女は病院で過ごしているのか……)
「それまで多くの医者にかかってきたらしいが、どうも相性が悪かったらしいとかで、治療も上手くいってなかったらしい」
「それで、怜士さんが……?」
「俺もあっちの病院は協力医で行ってるだけだからな。たまたま診たのがきっかけで、彼女のご両親から主治医になってほしいと頼まれたんだ」
紹介状を眺めていた怜士は、デスクの上に置かれたパソコンモニターへと視線を上げる。
カタカタと数字の羅列を打ち込むと、画面には電子カルテが現れた。
「で? 俺とはどういう関係だと言ったんだ?」
そう聞いた怜士は、画面をスクロースしながらも口角を上げてどこか意地悪く笑みを浮かべている。
その表情に、何故かこの間のキスがフラッシュバックしてきてしまった。
ギクリとした沙帆は怜士から目を逸らし、 無駄にクリーナーを働かす。
「特に、何も言ってません。そもそも、誰に言っていいのかも聞いていなかったですし……」
「何も隠すことはないだろ。婚約は正式なものだし」
あっさりと言い放った怜士は、更に「むしろ周知させるための婚約なんだから」と付け加える。