今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「そうかもしれないですけど、あの場では、言う空気ではなかったですよ」
あんな風にあからさまに牽制されたことは人生初めてのことだった。
でも、思い返してみれば彼女のあの言動は怜士への想いが詰まったものだったのだ。
「彼女、怜士さんに想いを寄せているってことですよね……?」
「ああ、何度も好きだと言われてる」
「えっ!」
包み隠さず返ってきた言葉に、沙帆の声のボリュームが上がる。
それも気にせず、怜士は鮮やかなブラインドタッチを続ける。
「結婚してくれとまで言ってる。相当気に入られてんな」
「じゃ、じゃあ余計婚約者だなんて言えません! それに……」
今の咲良にとって、病院での生活に怜士の存在は大きいに違いない。
怜士が主治医であるから、余儀なくされている病院生活も治療も頑張れているのだと沙帆には思えた。
「怜士さんの存在は、彼女の支えになっているんだと思うんです。だから、私が積極的にそれを壊すのは、やっぱりできないです」