今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~


床の絨毯と同じ濃紺色のソファーに沙帆を座らせた鷹取は、その前に膝をついて正面からじっと沙帆を見つめる。

目を合わせるのも緊張して逸らしたい衝動に駆られるのに、すぐ目の前から凝視されては耐えられない。

たまらず沙帆が俯くと、鷹取は膝の上で揃えてある沙帆の右手をおもむろに取った。


「あっ」


反射的に引き抜こうと力が入ったけれど、鷹取は自分の人差し指、中指、薬指を沙帆の手首へと押し当てる。

そうしてから次に、胸下まである沙帆の黒髪を退け、耳の下へと手を当てるのだった。


「あのっ……」


躊躇なく触れられて声が上擦る。

目の前からじっと見つめられ、頸動脈に触れる鷹取の温かい手に、勝手に鼓動が早鐘を打つ。

これでは、脈が余計に振れる。


「何か持病があるとかは」

「え……いえ、特には」


どうしてそんな質問をされているのか理解に苦しむ沙帆は、無意識のうちに怪訝な顔をしてしまう。

鷹取は沙帆から手を離し立ち上がると、「じゃあどうして」と真顔で沙帆を見下ろした。


「プールに落ちたりする」

「それは……」

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