今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~


取りに帰ったものをバッグに詰めてリビングに下りると、千華子が珍しく自分で紅茶を淹れてダイニングテーブルについていた。

二人分のカップとソーサーに、一緒にいつものアップルパイが白いケーキ皿に載って置かれていた。


「樹は帰っちゃったから、二人でいただきましょう」

「うん」


カップに紅茶を注ぎながら、「急いで帰っていったけど、約束って女性かしら?」と千華子はふふっと笑う。

沙帆は「そうかもね」と千華子の向かいの席の椅子を引いた。


「お父さんは? また別々?」

「ええ、今日は会食よ、月一恒例の」


良嗣と結婚し、もう何十年にもなるからか、良嗣がいないことを当たり前で何ともないことのように千華子は話す。

沙帆はそれを見て、「寂しくないの?」と無意識のうちに口を開いていた。


「昔から、一緒にいること少なかったでしょ? 寂しいとか、思ったことはないの?」

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