今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
医者をする二人の多忙さを、沙帆は幼い頃から何度も嘆いてきた。
しかしその反面で、決して口には出さなかったものの、両親が誇らしいと心の片隅で思う部分も確かに存在した。
何不自由なく、ここまで生きてこれたのが何よりの証拠だ。
千華子が初めて、寂しい思いをさせてきたと自覚していたことを口にしてくれ、沙帆はどこか救われたような気持ちになっていた。
「だから沙帆も、結婚したら頑張りなさい。怜士さんのためにも、あとから増える家族のためにも」
それには、素直にうんと頷くことができなかった。
両親は、婚約が破棄になったと報告したら、どんな顔をするだろう。
そんな未来が、沙帆にはまだ想像がつかなかった。