今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
はたから見れば、何か病気持ちで具合が悪かったが故の事故……と見えたのかもしれない。
そう見えたから、鷹取も慌てて飛び込んでまで救助してくれたのだろう。
「すみません、でした……」
「で……じゃなかったら、なんであんなことになるんだ?」
ソファーへと背中を預け、沙帆を見つめる鷹取は〝さぞ大層な理由なんだろうな?〟とでも言っているかの目をしている。
沙帆は姿勢を正し、膝の上でぐっと拳を握った。
「……彼の、浮気現場に遭遇しまして」
口にすると、さっき目にしたものが現実だったと認めたような気分に陥った。
さっきまではショックの方が優っていて、動揺し自分が保てない寸前の状態だった。
そのせいでプールに落下し、人様に迷惑をかけたのだ。
今更ながら、沙帆はどうして自分がこんな目に遭わなくてはならないのかと思い始める。
ひしひしと怒りが込み上げ、握っていた拳に更に力がこもった。
「私が……何かした?って、文句言ってやればよかった」