今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「おーい、沙帆先輩?」
「……あっ、うん、何?」
花梨の声にハッとして、モップをかける手を止める。
振り返って顔を見ると、花梨は食べ物を口に溜め込んだリスのように頬を膨らませて沙帆をじっと見つめていた。
「さっきから何回呼んでると思ってるんですか?」
「えっ、うそ、ごめん」
不機嫌そうな顔をしていると思えば、今度はどういうわけかにやりと口元を笑わせる花梨。
「さては……今日は〝ご主人様〟と誕生日アンド、クリスマスデートですね?」
「えっ……あ、いや――」
「バレバレですよー。朝から顔が緩みっぱなしです」
「へっ⁈」
指摘され、頬がかっと熱を持つ。
そんなに顔に出てしまっているのかと思うと、散々そんな顔を晒しておいて今更恥ずかしさでいっぱいになってしまった。