今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
今朝、今晩のことを怜士と約束してから、自分でも驚くほどそのことばかりを考えてしまっている。
怜士の今日の誘いが、自分の誕生日だということを知ってのものではないことを沙帆はわかっている。
きっと、たまたま。偶然の一致なのだろう。
それでも沙帆の心が弾んでいることは確かで、今日はいつも以上に仕事にも気合いが入っている。
一生懸命に清掃の手を動かしながらも心はここに在らずで、花梨の声が聞こえていなかったのだ。
「そんな素敵なやつじゃないよ。気まぐれで誘ってくれた感じじゃないかな」
あまりデレデレするのもみっともないと思い、なるべく表情を引き締める。
それでも花梨の方が冷やかしの眼差しをやめず、沙帆は誤魔化すように仕事の手を再開させた。
「いやいやいや、そこ謙遜するところじゃないですからね。いいなぁ、あんな素敵な人と誕生日とクリスマス過ごせるなんて〜」
花梨の羨望の声に赤面しながら、沙帆はそわそわ落ち着かない気持ちを鎮められないでいた。