今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
間接照明だけが灯る薄暗いリビングから、どこまでも続く夜景をぼんやりと眺める。
見おろすと、近くの街路樹の青く点灯したイルミネーションが小さく見えた。
さっきから手に持っているスマホには、着信もメッセージも入ってこない。
沙帆は何度見たかわからないスマホをソファーの座面にポンと投げた。
時刻は二十時を過ぎている。
夕方帰宅し、急いでシャワーを浴びた。
乾かした髪を整えて、メイクをし直し、出かけるという予定を考えて着替えを済ませた。
十八時には帰ってくるだろうと待ちながら、十九時を迎え、連絡を待つようにスマホを何度も見る時間を過ごした。
それでも、沙帆は怜士の電話に一切の連絡を入れていない。
何か予想外の事態が起きて、帰れない状況に陥っているのだろうと予想がついたからだ。
そういう体験は、両親で何度も身をもって経験してきている。
医師であれば仕方のないこと。
沙帆はそう、知っている――。