今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
目に映る光の元には、その数だけの人の姿が存在する。
その中には、今晩のクリスマスイブを祝う人も多くいるのだろう。
ガラスの先を見るのをやめ、ソファーへと腰を下ろす。
仕方ないと頭ではわかっていても、沙帆が今日の約束を楽しみにしていたことは確かだった。
朝、思いもしない約束を取り付けられ、今日は一日気持ちが弾んでいた。
何を着て行こうだとか、どこに行くのだろうかとか、あれこれ考えてワクワクして……。
今になってその膨らんだ気持ちの大きさを思い知る。
だけど、次に怜士に会った時、決して残念がってはいけない。
会ったら「お疲れ様です」と、気遣わなくてはいけない。
でも、この寂しさに押し潰されそうな感覚はなんだろう。
忙しい両親に感じていたものとはまた違う、胸が震える感覚。
視界が潤んできて、沙帆はぎゅっと強く目をつぶった。