今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
今日の約束は一体どうなったのかと、着信やメッセージが入ってきていると焦りながらスマホを手にした。
しかし、沙帆からなんの連絡もなく、また違う不安に駆り立てられた。
なんの音沙汰もなしに、帰ってもこない。
この状況なら、着信の一件でも入っていて良さそうなものだ。
病院を飛び出し車へと向かいながら、沙帆の番号を何度も鳴らす。
しかし、数度かけるうち呼び出しコールは鳴らなくなり、留守番電話センターへと直に繋がるようになってしまった。
普段よりもスピードを出した余裕のない運転をしながらマンションへと向かい、駆けてエレベーターへと乗り込む。
いつも何も気にならない上昇のスピードにも苛立ちを感じるほど、怜士の焦燥感は極限まで募っていた。
部屋へと到着し、逸る気持ちで玄関のドアを解錠する。
扉を引き開けると、隅に沙帆のグレージュカラーのパンプルが揃えて置かれていた。
「沙帆――」
靴を脱ぐのを忘れそうな勢いで玄関を上がっていく。
リビングまでのそのわずかな距離に、怜士は動悸が速まるのを感じていた。