今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
飛び込むようにして入った広いリビングは、メイン照明が落とされ、部屋の隅に置かれるデザイナーズ照明や間接照明のみが灯され薄暗かった。
天井まであるガラス窓はカーテンが開け放たれたままで、東京の街が煌いている。
その近くに設置したソファーセットの上で、沙帆は丸くなって目を閉じていた。
足音を消して、怜士は静かに近付いていく。
沙帆が横になった足元の座面には、画面のつかないスマホが置かれてあった。
(沙帆……)
きっと仕事から帰宅して、約束した通り待っていてくれたのだろう。
今朝出がけに見た、ジーンズにニットの出勤用のラフな格好ではなく、横になる沙帆はブラックでドレッシーな余所行きのワンピースを身にまとっている。
朝はポニーテールにしていた長い髪も、今は緩くふんわりと巻いてあった。
起きる気配のない沙帆を目にして、怜士は脱力感に襲われた。
連絡がつかないことに、何かあったのではないかという心配もしていたからだ。
沙帆の横へと膝を落とし、頬にかかる髪をそっと払いのける。