今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「あっ、あの、私……ご、ごめんなさいっ――」
訳がわからなくてベッドから飛び出ようとした沙帆の腕を、怜士の手が掴んで止める。
そのまま引き寄せ、元寝ていた場所に戻された。
「謝るのは俺の方だから」
「え……?」
「約束……守れなくて悪かった」
そう言われて、怜士を待っていた眠るまでの自分を思い出した。
待てども待てども帰ってこなくて、ソファーに掛けて……。
でも、そのあとからの記憶が丸っとない。
今の自分の置かれる状況を見ると、ソファーで寝てしまったのを怜士が運んでくれたということだ。
そこでハッとして、シーツの下の自分の姿を確認する。
服はちゃんと乱れなく着ていて、出掛けるために着替えたワンピースの姿だった。
「いえ、そんな……何か、急なお仕事だったんですよね?」
彼の仕事のことを深く追求するつもりは、沙帆にはない。
どれだけ過酷で精神を擦り減らすのか、聞いたところで想像することすら難しいからだ。