今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「私は、大丈夫なので……お疲れ様でし――」
怜士の手が再び沙帆の腕を掴み、少し強引な力で引き寄せる。
言葉を遮られたのは、怜士の腕の中に閉じ込められたからだった。
寝起きから驚きで高鳴っていた鼓動が、更に大きく音を立てて鳴り響きだす。
沙帆を抱き締めた怜士は、その小さな頭を抱え込むようにして髪に唇を寄せた。
「なんだよ、それ……俺は大丈夫じゃないんだけど」
「え……?」
独り言のように、自分だけに呟くように、怜士はぼそっと抱き寄せた沙帆の頭に言葉を落とす。
沙帆は振動までしてきそうな心臓の音に完全に気を取られていた。
「誕生日……祝いたかったって言ってんだよ」
「え……なんで、それ……」
怜士の口から出てきた思わぬフレーズ。
(じゃあ、昨日が誕生日だって、知ってて……)
沙帆の頭を抱えていた腕を緩め、怜士はその手で紅潮する頬へと指を触れる。
見つめ合うと、沙帆は自分の鼓動が怜士に聞こえているのではないかと心配になった。