今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「なんでって、知ってるに決まってるだろ」
「決まってるって……だって、私は怜士さんの誕生日、まだ知らない――」
「俺のはいいから」
フッと笑って、怜士は沙帆の頬を優しく撫でていく。
その手が愛おしいものにでも触れるような手つきで、沙帆の胸はきゅんと切なげな音を響かせた。
片肘をついて上体を起こし、怜士は横たわる沙帆を真上から見下ろす。
すぐ耳の横に怜士の反対の手が着いてきて、わずかにベッドを沈ませた。
「怜士、さん……」
いつもは計算高くセットされているゆるふわで艶のある怜士の黒髪が、今はラフにさらりと流れ落ちている。
戸惑いに揺れる沙帆の瞳をじっと見つめると、その距離は近付き、怜士は迷うことなく沙帆の唇にキスを落とした。
柔らかい感触と温かい温度が、沙帆の全身の熱を上昇させていく。
「っ……、私たち……本当の婚約者ではないのに、どうし――」
再び重なり合った唇が、甘く言葉を封じ込める。
「黙って――」
ほんの少し離れた口付けの隙間、意地悪な囁きが濡れた唇を震わせた。