今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
白地に、中央に上品に入るエンブレムと、その下に筆記体の文字列。
それは前に怜士に教えた、千華子が好きでよく買ってくるアップルパイのスイーツのお店のものだった。
「それ……」
「昨日、本当は帰りに取りに行くはずだったものを、届けてもらった」
「え……?」
ダイニングテーブルへと置いた紙袋は、いつも千華子が持って帰ってくるものより大きく、中から出てきた箱も大きい。
怜士がその箱から出した中身は、六号ほどのホールケーキだった。
「わぁ……これ……」
生クリームに覆われたケーキは、側面から繊細にクリームでデコレーションされ、その上には水色やピンクなどのパステルカラーのバラを象った飾りが上品に載っている。
中央には【Happy Birthday Saho】と筆記体で書かれた白いプレートが飾られていた。
「一日ずれちゃったけど、誕生日おめでとう」
沙帆は言葉が出ず、首を横に振るので精一杯だった。
いつかの自分の話を覚えてくれていて、こうして用意してもらった気遣い。
自然と目頭が熱くなる。
さっきは、もう次の誕生日には一緒にいないことを心の中で悲しんだ。
でも今は、この瞬間だけでも悲しむことを忘れようと思う。
「朝ごはんにケーキ、いただいてもいいですか? お腹、空いてます」
そう言った沙帆を、怜士はいつものようにフッと笑った。