今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
その名前を聞き、沙帆は『ああ!』と思い出した。
(この方、初めてあの子に話しかけられた時に呼び戻しに来た方だ)
しかし、突然の呼び出しに動揺してしてしまう。
「お仕事中のことと思うのですが、お願いできませんでしょうか?」
「……わかり、ました」
仕事の方は予定より早く進めているから、少し時間を割いても大丈夫だと沙帆は判断し、佐田のあとについていった。
心臓血管外科の病棟へと向かいながら、今日は怜士がここに来ていないことに沙帆はホッとする。
深い理由はないが、咲良とコンタクトを取ることを、なんとなく知られてはまずい気がしたからだ。
清掃にきていて沙帆も知っていたが、どの科の病棟にも、特別室という部屋が何室か存在する。
咲良はその特別病棟の一室に入院していた。