今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
ピリリリ、ピリリリ――。
静かだった部屋の中に、聞き慣れた着信音が鳴り響き始める。
いつの間にか届けられていたのか、沙帆の荷物一式がそばにある一人掛けソファーの上に置かれてあった。
そのバッグの中に入っているスマホが鳴り続けている。
「さっきから何度もかかってきてた」
「えっ、うそ」
鷹取の言葉に、沙帆は「すみません」と腰を上げて荷物へと駆け寄る。
取り出したスマホのディスプレイには、花梨の名が表示されていた。
「もしもし、花梨ちゃん?」
『沙帆先輩⁈ 良かった、やっと出てくれた……』
電話の向こうからは、花梨の心底心配した声。
理由もなく突然逃げるように去ってしまった自分の行動に、花梨の声を聞いて申し訳ない気持ちでいっぱいになった。