今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~


「って……言いたいところだけど、あの日、夕方に発作を起こしたの。本当に、怜士先生を帰れなくさせちゃって……」


そこまで言った咲良が、やっと沙帆へと顔を向ける。

その表情は今まで沙帆に向けてきた尖ったものではなく、真っ直ぐでどこか真剣な色を浮かべていた。


「だから、謝りたかったの、あなたに……ごめんなさい」

「え、いえ、そんな……」


想定外の展開に沙帆は慌てふためく。

呼び出されて謝罪をされるなんてこと思いもしてなかった。

それより何より、あのクリスマスイブの日に怜士が帰れなくなった原因が、咲良の容態が悪化したからだとは知りもしなかった。


「それより、今は体調は……?」

「今は安定してるわ。怜士先生のおかげでね」

「そう、ですか……でも、どうして、私に謝ったりなんか」


あの日、怜士が帰れなくなったことに関して彼女が自分に謝ってくるのか……。

沙帆にはそれが疑問だった。


「聞いたのよ、あなたと、怜士先生のこと。怜士先生の口から」


そう言った咲良は再び日が差し込む窓へと顔を向けた。

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