今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「でもね、私は死なない。だって……怜士先生が必ず治してくれるって、信じてるから」
いつの間にか、沙帆は自分の視界が潤んでいることに気が付いた。
遠くを見つめる咲良の、希望に満ちた微笑みが揺れて見える。
沙帆は下唇を噛み、何度もうんうんと頷いた。
「言っておくけどね、あなただっていつ何があるか、わからないんだからね?」
しんみりとしてしまった空気に水を差すように、咲良は沙帆に厳しい言葉を投げかける。
その目には、いつも通りの力強さが宿っていた。
「だから、もたもたしてたら、元気になって本気で怜士先生にアタックしちゃうんだから。いい? わかった?」
咲良の宣戦布告に、沙帆の顔には自然と優しい笑みが浮かんでいた。
それを目に、咲良はあからさまにフンとまた窓の外に顔を背ける。
「……ありがとう」
沙帆の静かな感謝が、西日が差し込む病室に温かく響いた。