今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
『急用って、大丈夫ですか? もう帰ってますよね?』
「あ、うん、それが、ちょっと色々あって……花梨ちゃん、まだホテルにいる?』
『はい、とりあえず沙帆先輩と連絡がついてから動こうと思って』
「ごめんね。私も、近くにいるから、今すぐ行くね」
花梨が一階ロビーにいると聞き、通話を終わらせる。
スマホを手にしたまま鷹取に振り返った。
「ありがとうございました。あの、お詫びをさせていただきたのですが――」
「必要ない」
「いえ、そうはいきません!」
「そういうつもりで関わったわけじゃない。人を待たせているなら、早く行った方がいい」
食い下がる沙帆を制して鷹取は腰を上げると、まとめてある荷物を持ち沙帆の腕を掴む。
そのまま部屋の入り口まで引っ張っていくと、ドアを開け後腐れなく沙帆を外へと出した。
「じゃ、もう落ちるなよ」
「あっ――」
何か言わなくてはと思った時にはドアは閉められていて、沙帆はしんと落ち着いた空気を漂わす廊下に一人ぽつりと立っていた。