今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
上品に光沢のあるブラックのスリムスリーピースに、グレーカラーのタイとポケットチーフ。
普段とまた雰囲気の違う今日の怜士の姿は、祝いの席に華を添えている。
「悪い、一人にして」
「いえ……お疲れ様です」
昨日、逃げるように部屋にこもったきり、沙帆は怜士と顔を合わせることを避けた。
今朝もちらりと挨拶程度に会ったくらいで、いよいよ祝賀会が始まってしまった。
沙帆は一人、どこか居心地の悪さを感じてしまう。
「ご挨拶でお忙しいでしょうし、私のことはお構いなく」
何百人と人が溢れる広い会場内で、怜士は一際存在感を放っている。
どこにいても目立ち、多くの人目を引く。
整う容姿はもちろん、彼にしかない独特のオーラは、生まれ持ったカリスマ性を感じる。
そんな怜士と繋がろうと、次々に名刺を手に入れ替わり立ち替わり人が集まる。
沙帆は隅からそんな怜士を眺めていて、やっぱり雲の上の人だと彼を遠くに感じていた。
「そうはいくか」