今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「謙太郎さん、どうして……」
一人でいた沙帆を呼び止めたのは、沙帆の元彼の謙太郎だった。
どうしてこんなところにいるのかとギョッとしたが、彼もこの式典に出席していたのだろう。スーツを着て正装だった。
「沙帆……調べさせてもらったよ」
「え……?」
「婚約なんて、本当はしていないんだろ?」
核心をつく謙太郎の言葉に、沙帆は指先の力が抜け、手に持つパーティーバッグを落としそうになった。
途端に視線が泳ぎだす。
(調べたって、どうしてそんなこと……)
立ち尽くす沙帆へ、謙太郎が距離を詰めてくる。
「沙帆、どうなんだよ」
「どうって……きゃっ」
迫った謙太郎の両手が、沙帆の両肩を力強く掴む。
弾かれたように顔を上げた沙帆に、謙太郎は訴えるような眼差しを送った。
「どうせ、都合よく利用されてるだけなんだ。潔く奴と終わらせて、俺と一緒になってくれ」
「な、何言って……痛い、離して」