今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
沙帆を腕に抱いたまま、怜士はエレベーターでホテルの上階を目指す。
到着した階は先ほどまでのフロアとは違う、シックでクラシックな雰囲気だった。
濃紺に模様の入った絨毯と、重厚な木造の客室扉。
広い通路には、高そうなロココ調のソファが置いてあったりする。
「あの、怜士さん……?」
明らかに何かに向かって進んでいる足取りなことは確かだが、ここはホテルの客室フロア。
沙帆を抱き寄せたまま怜士がやっと足を止めたのは、そのフロアの最奥の扉の前だった。
沙帆から一瞬も手を離さず、怜士はその扉を開く。
共に入ったドアが背後で閉まったと同時、腰を抱く方とは逆の手が沙帆の背に回り、あっという間に怜士の両手に包み込まれていた。