今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~


「れっ、怜士さん?」


それまでも落ち着かなかった鼓動が、抱き締められてしまったことでより暴走し始める。

中から叩くように鳴る心臓が、近付いた怜士に聞こえてしまいそうなほど音を立てていった。

沙帆を両手の中に閉じ込めた怜士は、沙帆の肩口に顔を埋める。


「以前した婚約の取り決め、全部なかったことにして欲しい」

(え……?)


それは一体どういうことか。

そう沙帆が思いを巡らせた時、ゆっくりと身体を離した怜士が、戸惑う沙帆の顔を見つめた。


「沙帆……好きだ」


真っ直ぐ沙帆を見る怜士の目は真剣で、沙帆は吸い込まれるようにその目を見つめ返す。

怜士の告白に、高鳴っていた沙帆の鼓動は衝撃すぎて止まってしまいそうだった。


「誰にも渡したくない。俺だけのものにしたい」

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