今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
次々と出てくる言葉は、沙帆には信じられないものばかりだった。
(怜士さんが、私のことを……?うそ……)
それでも、目尻から溢れてしまいそうなほど涙が浮かんでくる。
怜士は柔らかく微笑んで、沙帆の涙袋に指を触れた。
「なんで泣くんだ」
「だって、ですね……信じ、られなくて……本当なら嬉しくて……」
素直に気持ちを口にする沙帆を、怜士はまた大事そうに抱き締める。
髪を撫でながら赤くなっている耳に唇を寄せた。
「渡したいものがある」
「渡したいもの、ですか?」
入り口から奥の部屋へと向かうと、広いリビングルームが現れる。
怜士はソファーセット前のローテーブルから小箱を掴むと、その中からいつか一緒に見に行ったエンゲージリングを取り出した。
沙帆の左手を取り、薬指へリングをはめていく。
「本当は昨日、これを渡して、結婚してほしいと言うつもりだったんだけど」
「え……?」
怜士にそう言われて、沙帆は昨晩のことを思い返す。
(もしかして、あの時……?)