今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
意味深な怜士の様子に、怖くなってあの場を去ってしまった。
それからは部屋からも出ていかず、いつのまにか眠りについてしまっていた。
「そう、だったんですか……私、てっきり、今日が終わったら、もう嘘の婚約者は解消でいいと、そんな話をされるとばかり……」
沙帆の大きな勘違いに、怜士は「馬鹿だな」と苦笑を漏らす。
「だから、今日話そうと思ってた。正式に、俺と一緒になってほしいって」
さっき祝賀会の会場で怜士が話があると言ったのも、このことを伝えようとしていただけだったのだ。
全てマイナス思考で早とちりして、一人ショックを受けていた自分に、沙帆は今になって深いため息をつきたい気分だった。
大粒のダイヤモンドが輝く薬指を見つめている沙帆の頬へ、怜士の温かな指が触れてくる。
ゆっくりと顔を上げていくと、怜士の熱い眼差しと視線が絡み合った。
「沙帆……俺と、結婚してほしい。俺の生涯をかけて、幸せにすると約束する」
沙帆の目に、また薄っすらと涙が浮かぶ。
嬉しい気持ちに、信じられない思い。
通じると思っていなかった想いが通じ合い、沙帆は自ら怜士の腕の中に飛び込んだ。