今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「昨日、俺も沙帆と同じようなことを考えてた」
「え……?」
ベッドの縁に腰を下ろし、沙帆に背を向けたまま、怜士は唐突に話を始める。
綺麗な肩甲骨と背筋が見える逞しい背中を目に、沙帆は密かにどきりとしながら続きの言葉を待つ。
「もし、本当に結婚を申し込んだら、断られるんじゃないかって。沙帆と同じように不安になってた」
「えっ、そんなこと、有り得ないです!」
怜士ほどの人が何を言うのか。
驚くような怜士の発言に、沙帆はつい声のボリュームが上がってしまう。
怜士は綺麗な横顔にふわりと笑みを浮かべた。
「でも、『医者は無理です!』と散々言われてたからな……そんなの聞かされてりゃ、そう思うだろ」
うっと、沙帆は一瞬言葉に詰まる。
フッと鼻で笑った怜士が沙帆の手で遊んでいるペットボトルを取り上げた。
「絶対に、と無責任なことは言えない。だけど、寂しい思いをさせないつもりで結婚してほしいと言ったつもりだ」
「怜士さん……」