今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
沙帆は兄と共に、小学校から私立学校のエスカレーター式一貫校に通った。
その後、大学進学は医大へとはせず、経済学部へ。
しかし、医師という道を避け、離れていっても、大学在学中から両親よりお見合いの話は常だった。
どこ病院の何代目、は基本。
中には、沙帆が医師を目指さなかったために、見合い相手の医師を婿養子に迎えて、いずれ沙帆の兄がトップに立つ自分たちの病院『三角記念病院』を共に支えてもらいたいなんて話が出たこともあった。
親の顔を立て、お見合いの席に出ることもあった。
だけれど、話が発展することは沙帆の意思がないため有り得なかった。
「沙帆先輩、今日も張り切ってますね! 新しい現場だからですか?」
今日も一緒の現場に配属された花梨が、にこにこと横から沙帆を覗き込む。
「まぁね。病院は一番清潔じゃなきゃだめなところだからね。気合いも入るでしょ」
幼少期から両親の敷いたレールを歩いてきた沙帆が、自ら就きたいと思った仕事。
それが、今のクリーンスタッフの仕事だった。