今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
小学校から電車で通う私立学校だった沙帆は、近所に同世代の友達がいなかったために、公園などに遊びに行くことをあまりしなかった。
そんな沙帆は、幼い頃から自宅に来ていた家政婦の掃除をよく観察していた。
自宅で一人遊びをする中で、家政婦の吉永(よしなが)の仕事は、沙帆の興味を引く関心事の一つだった。
中でも、掃除に関しては特に興味深く、沙帆は手伝いたいと言っては、よく吉永の仕事を手伝っていた。
掃除と一口に言っても、奥は深い。
基本の掃除から、プロ式のクリーンテクニックまで。
当時、五十歳を過ぎた吉永は沙帆の両親にはない生活の知恵を多く持っていて、それはまさに〝おばあちゃんの知恵袋〟だった。
吉永にかかれば落とせない汚れはない。
幼かった沙帆にとって、吉永の仕事は魔法のように目に映った。