今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
そんな人がいれば沙帆だって文句はない。
いやむしろ、大歓迎だ。
しかし、そんな人間出会った試しがない。
「そんな人がいたら……私だって文句言わないで結婚するけど……いないもの」
「それは、今までお会いされた方が当てはまらなかっただけで、これからお会いする方はわかりませんよ?」
吉永はにこりと微笑み、踵を返してキッチンへと戻っていく。
「もしかしたら次にお会いする方は、沙帆さんの理想の方かもしれません。だから、希望は捨ててはダメですよ!」
吉永お得意のプラス思考が炸裂し、沙帆は「えぇ〜?」と全く信用ならないという声を上げる。
しかし昔から、考え方が後ろ向きになりがちな沙帆を、吉永のプラス思考は幾度となく救ってきた。
沙帆が困ったり迷ったとき、吉永は持ち前の明るさと前向きな考えで、沙帆の背中をそっと押してきてくれたのだ。
「大丈夫です、いつか絶対に出会えるはずですから。それまで、根気強くお見合いの話も受けたらいいんですよ」
「根気強くって――」
そのとき、玄関方面から「吉永さん、帰ったわー」と千華子の声が聞こえてきた。