今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
良嗣は目を爛々とさせ、沙帆に訴えかける。
いい縁談だとか優れた相手だとか、そのようなことを毎回言われている気がしたが、そこは突っ込んでも仕方ないところだと思い呑み込む。
「聞くまでもないけど、もちろん医師……なんだよね?」
「ああ、もちろんだ」
沙帆の問いに、良嗣は意気揚揚と答える。
良嗣としては〝医師〟だというところに自信を持ってのことだ。
しかし、沙帆はそこをマイナスポイントにすら感じてしまう。
そんな沙帆の心の内も知らず、良嗣は「彼はペンシルバニア大学の医学部に――」などと、まるで自分のことを自慢でもするように話し始める。
千華子が買って帰ってきたアップルパイを切り分けてきた吉永が、三人の前に静かにケーキ皿を並べていった。
「あちらも、ぜひ沙帆と会いたいと言っている。すぐにでも席を用意したいと。経歴だけでなく、彼は男前でな」
「あっ、頂いている写真、持ってきてるわ」
横から千華子が口を挟み、持って帰ってきたお見合い写真を「見てみなさい」と向かいの沙帆へと差し出した。