今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
花の模様が薄っすら入ったハードカバーをそろりと開く。
そこには、愛想のいい微笑を浮かべる七三分けの男性が映っていた。
真面目そうではあるが、外見のみで点数を付けるなら平均といったところだろう。
父にはこの感じで〝男前〟なのかと沙帆は心の中で密かに思う。
「どうだ?」
「……どうって言われても、会ってみないとなんとも言えないよ」
沙帆から返却される写真を受け取りながら、千華子は「そうよね!」と同意を見せる。
「じゃあ、早速日取りを詰めましょうと連絡しましょ!」
「えっ、ちょっと待ってよ、私はまだ会うとは――」
「会ってみないとって今言ったでしょ?」
千華子はしれっと言い、「いただきまーす」とアップルパイへとフォークを入れる。
大きくカットされた透き通ったリンゴが、押し出されるようにしてパイ生地の間から飛び出した。
「言ったけど、それは言葉の綾というか……」