今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
行き先をすでに知らされているタクシーは、都内の一流料亭へと到着した。
一等地にあるが広大な敷地を構え、開放された高い木製の門の先には、立派な日本庭園と風情のある建物が見える。
入っていく車や出ていく車が見事に高級車ばかりで、沙帆は車窓からその高貴な光景に感心していた。
「ありがとうございました」
運転手に礼を言い降車すると、聳える立派な松の木を見上げる。
どこを見ても格式高く気後れしそうだったが、着物で訪れて身なりだけでも見合うもので良かったと救われた。
「沙帆!」
呼びかけに顔を向けると、エントランスから千華子がやってくるのが目に映る。
今日は落ち着いたブラックスーツの装いの千華子は、建物前を流れる小川にかかる赤い橋を歩いて沙帆の元へと近付いた。
「待ってたわ。あら、やっぱり似合うわね、その着物。可愛いわ」
「そう?」
「華やかでお見合いにはもってこいよ。お相手、もういらしてるわ」