今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
すでに見合い相手が待っていると知らされた沙帆は、途端に緊張に包まれる。
不本意なお見合いだとしても、自分のためにそういう場が設けられているということ自体に平常心ではいられない。
千華子に促され、庭園を望む長い渡り廊下を進んでいく。
本館とは離れになっている個室の部屋前に到着すると、小上がりを上がった千華子が「入るわよ」と小さく沙帆に声をかける。
ぴたりと閉められた襖を開けると、牡丹の花模様が入った衝立の向こう、和やかな話し声が聞こえた。
「失礼いたします」
千華子が中へとかけた声に、話し声はぴたりと止む。
(いよいよだ……)
帯に締め付けられた胸で深く深呼吸をし、千華子の後へと続く。
「お待たせいたしました」と言う千華子の横で頭を下げようとした沙帆は、そこに見た相手の顔に目を見開いていた。