今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~


頭は下げ損ねた上、腕を上げて指をさしそうになってしまったが、普段よりも重い袖のおかげで既のところで留まることができた。

しかし、必要以上に開いた目と口が元に戻らない。


「沙帆、ご挨拶して! ちょっと?」


千華子が小声で掛けた声も沙帆には届かず、静止状態で固まっている。


「すっ、すみませ〜ん! この子、緊張しているみたいで」


千華子が取り繕うものの、沙帆は微動だにしない。

その目には、艶やかな黒髪と陶器のように綺麗な肌を捕えている。

そして、意志強そうな切れ長の目と視線が重なると、一際大きく鼓動が跳ね上がった。

相手側の両親の言葉で、沙帆は千華子によって用意された席へと座らされる。

改めて正面で対面したのは、一度目はホテルのナイトプールで、二度目は大学病院で会った、あの、鷹取という男だった。

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