今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「ほら、イケメン先生ですよ! 目の保養になる〜」
花梨はうっとりとした声を出し、怜士を眺めている。
「でも、未だに信じられないですよ、沙帆先輩がプールに落ちたっていう時、あの先生に助けてもらったとか。で、仕事先でまた運命の再会ですもんね!」
「運命って……」
花梨がこんな調子なものだから、沙帆はお見合いの話まで花梨にできていない。
それを言ったら、更に大騒ぎされてしまうだろう。
頃合いをみて、言う必要がありそうなら話そうと思っている。
「でも、この間ここで沙帆先輩がハシゴから落ちたときも、私がオロオロしてるうちに先輩のこと抱き上げて、運んでいって……不謹慎発言ですけど、絵になるというか、めちゃくちゃかっこよかったんですからねー! お姫様抱っこで!」
目を覚ますと処置室で、怜士と顔を合わせたけれど、ストレッチャーか何かで運ばれたとばかり思っていた。
(そう、だったんだ……)
患者と談笑する怜士をこっそりと眺めながら、沙帆は花梨に気付かれないように小さく息を吐き出す。
お弁当の続きを食べようと膝の上に視線を落とすと、ベンチの傍らに置いておいたスマホに新着メッセージが入っていた。