今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~


その日の夕方――。

約束した待ち合わせ場所に向かうと、すでに到着していた相手はにこりと笑みを浮かべて沙帆に片手を挙げた。

父親譲りの長身は百八十もあり、オーダーのスリーピースがモデルのようにきまっている。

そして、母親譲りの整う顔面は甘いマスクと例えるのがしっくりくるほど。

兄妹だというのに、いいところは全部兄に持っていかれたと、沙帆は子どもの頃から常日頃思ってきた。

だけど、幼少期から親より一緒の時間を過ごしてきた兄――樹を、沙帆は両親よりも慕っている。

沙帆の寂しさや悩みに、樹はいつも自分のことのように向き合ってきてくれたのだ。

そんな兄から昼間、【今晩食事をしよう】と連絡がきたのだった。


「お兄ちゃん、急にどうしたの?」

「沙帆、会いたかったよ」


目の前にやってきた妹の頭を両手で包み込み撫でながら、樹は背を縮めて沙帆の顔を覗き込む。

街中だというのに人目を全く気にする様子はなく、妹可愛さに抱き締めそうな勢いだ。

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