今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「会いたかったって、少し前に会ったじゃん。大袈裟だなー」
「いやいやいや、もう一ヶ月近く経つだろ」
樹は大学時代から実家を出、そのまま一人暮らしをしている。
一緒に暮らさなくなってからは、こうして約束をしては食事をしたりして会うようになった。
「仕事は? 早く終わったの?」
「ああ、今日は診察には出てないんだ。近くに学会があってさ、その関係で」
沙帆と違い、樹は医学部に進学。
両親の希望した通り、医師への道を歩んでいった。
現在は心療内科医として患者も診ながら、『三角記念病院』の事実上院長という立場にある。
沙帆の五個歳上になる三十歳の若さで病院を継承した樹に、両親は多大な期待をしている。
昔から放っておいても優秀な樹は、何の不満も言わずに穏やかに医師への道も志したのだ。