今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
全身が水没してやっと、目が覚めたような感覚だった。
弾けて沸き立つ泡の大群。
何の覚悟もないままにダイブして、両手足を懸命にばたつかせる。
泳げないわけではない。
けれど、夏場の薄着といえ着衣の状態。
身体が思うように動かせない。
パニック状態で水中で大暴れする最中、必死にもがく腕を強い力が引き上げた。
水面に上がった途端、髪が顔面に貼り付き、視界を遮る。
忙しなく空気を取り込もうと呼吸を繰り返し、邪魔な髪を指で退けた。
そこでやっと、沙帆は自分が誰かに助けられ、抱きかかえられていることに気が付いた。
咄嗟に掴まる体勢になって、相手の首に両腕を回してしがみついている。
すぐにプールサイドへと身体を持ち上げられ、腰掛けるようにして座らされた。