からめる小指  ~愛し合う思い~
「和君、淋しいよぅ~」

千尋に泣かれるなら、飛んで行っていただろうが……

声の主は、樹。

何が淋しいだ。アホ!

2月を迎え、千尋もはぁちゃんも登校しなくなった。

バイトを始め、二人で行動しているらしいけど

マンションにはあまり顔を出して来ない。

樹も卒業式に向け忙しいみたいで、はぁちゃんとゆっくり過ごしてないようだ。

「それより、卒業旅行……本当にディズニーランドに行くのか?
行くなら予約が必要だし、二人にも相談しないといけないだろう。」

「そうそう!ディズニーランド。
その相談だって言ったら集まるよ!
俺達に遠慮して逢えないからね、これなら来てくれるよ。」

はぁちゃんに会いたくて仕方ない樹は、おおはしゃぎだ。

だが、本当に俺達に遠慮してだけだろうか?

学校にいる間は、教師は大人の男で……カッコ良く見えても

一歩外に出たら、若くてカッコ良い奴は沢山いる。

コソコソとしか逢えない、オジサンの俺達じゃなくても

いつでも自由に会って、遊びに行ける同じ年頃の男の子の方が良いって思うだろう。

バイトに行き始めた今は、特にそう感じるはずだ。

「樹…………。
はぁちゃんと付き合ってて、別れる心配したことない?」

「えっ!和君、ちぃちゃんに振られたの???」

「…………嫌。
ただ、そう言われる可能性もあるなぁ~って。」

俺の答えに、腹を抱えて笑っていた樹が

「ないでしょう~。
和君は、何が心配?」

「…………………………。」

「俺は……遥と別れる心配をするくらいなら…………
遥が一緒にいられるように頑張るかなぁ。」と

樹にしては、最高の名言を吐いた。

確かにそうだ。

………………………けど………。

それは俺達の言い分。

千尋達が望んでなければ…………。

「和君、仕事がメチャクチャ忙しい時に
悪い想像ばかりしてたら、確実にハゲるよ!
ディズニーランド、ディズニーランド。
楽しいことだけ考えて、お仕事頑張りましょう!」

樹の性格は、ホントに羨ましい。
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