からめる小指  ~愛し合う思い~
「先生、おはようございます。」

今朝も賑やかな声がこだまする。

お揃いのクマをぶら下げて登校して来る彼女と親友。

同じクラスになって、より一層仲が良い。

隣の部屋から二人の笑い声が聞こえることも多くて

安心して仕事が出来る。

これは樹も同じらしく、先日一緒に飲んだ時も

「担任になると、どうしても一人ひとりの関わりが増えてきて
はぁちゃんに淋しい思いをさせることがあるんだよね。
彼女は何も言わないけど……ちぃちゃんに睨まれて…………。
たぶん、ちぃちゃんの前だと泣いてるんだろうな。
はぁちゃんには申し訳ないけど……どうしようもなくてね。
怒ってでも、ちぃちゃんが側にいてくれて助かってるんだ。」と。

たぶん、これはお互い様。

俺だって、密室で二人で相談することが多くて

千尋は嫌な思いをしているはずだ。

現に「格好いい服装をしないで。」と言われた。

彼女の可愛いヤキモチだと笑っていたけど……

「美奈子が先生のこと大好きだって言ったんだもん。」と泣かれた時は焦った。

『受験前に恋をする奴なんてそんなにいない。』と思っていたけど……

エスカレーター式のこの学校では、あまり関係無い……。

ましてや、恋をするのに条件や時間は関係ないんだなぁ。

俺だって………教え子に恋をしたし。

俺達大人二人が………こんなに悩んでるのに………

女子高生二人が、悩まない訳ないよな。

はぁちゃんが樹の彼女で良かった。

俺が樹とあれこれ話すように、尋にはぁちゃんは必要だ。

特に今、彼女の姉は始まったばかりの教師生活に

悪戦苦闘しているみたいだから。
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