からめる小指  ~愛し合う思い~
「肉、肉!」

子供のように騒ぐ樹に付き合って、精肉コーナーに行く。

「さぁ、美味しいお肉~」

鼻歌を口ずさむようにブツブツと言いながら

さっさと歩みを進める樹は、値段を見ること無く

カートに肉を入れて行く。

「ちょっと、先生!」

料理担当だと思っている千尋は、メニューも決まってない内から

ドンドンカートに入れて行く樹に、ご立腹だ。

「何を食べるつもりですか?!」

一生懸命後を追って文句をつけている。

「大丈夫!!今夜はバーベキューだよ~
管理人の夫婦が、ちゃんと準備してくれてるはずだから~。
明日の朝ごはんだけお願いね!」とニッコリ笑ってる。

「これだから………金持ちは……。」

ブツブツ文句を言いながら、参加することの無くなった買い物から離れ

俺のもとに戻って来た。

樹は、はぁちゃん相手に

「ステーキ焼く?ソーセージは?」と食べたいものを入れている。

「もう!」

まだ怒りのおさまらない千尋に

「ところで、今日と明日は『先生』呼び禁止な。
はぁちゃんは、俺と樹を愛称で呼ぶから問題無いけど
尋が『先生』と二人を呼ぶ度に、周りが見てるから。」

「えっ!!」

慌てて口を手で押さえてるけど………今更遅いって。

可愛い仕草に笑ってると

カゴいっぱいの肉を入れた二人が帰って来た。

「オイ、いくら何でも多いだろう?
ちょっと減らしてこい。野菜や魚介も焼くんだろ?」

魚介と言われて思い出したのか

「海老にホタテも買おう!」と

肉を減らすこと無く、今度は鮮魚コーナーを目指して歩いて行った。

「まだ増やす気かなぁ?」

怒りも忘れて呆然とする千尋。

「たぶんね。
昔は、残ると次の日にすべてぶちこんでカレーにしてた。」

「えっ!スッゴい贅沢なカレー。」

庶民の俺達からしたら、残りはまた後日にするけど……

アイツの考えだと、焼かずに煮て食べただけと言う感覚らしい。

千尋じゃないが………ホントに金持ちのボンボンだよなぁ。
< 25 / 126 >

この作品をシェア

pagetop