からめる小指  ~愛し合う思い~
コンコン。

四人部屋の窓際に千尋は寝ていた。

怒鳴る前に……

穏やかな寝顔が目に入り………安堵の笑みが溢れた。

はぁちゃんに至っては………涙を溢し樹に抱きしめられている。

………………………………………う……ん。

俺達の気配を感じたのか、覚醒し始めた。

パチッ。

目を覚ました彼女は……

はぁちゃんに頬を叩かれて…………目を丸くしている。

ワァンワァン泣くはぁちゃんに

俺の空しさや怒りは、おさまった。

「…………………はぁ………ちゃん?
…………………先生??」

「ちぃのバカ!!」

ギュッと抱きしめ、怒り……泣くはぁちゃんを見て

「彼氏の役目………取られちゃったね。」と笑う樹。

取られたというか……………

これで良かったんだと思う。

彼氏の俺が心配するよりも…………

今の千尋には…………はぁちゃんの存在が必要だ。

俺以外にも、これ程自分を心配し泣いてくれる人がいるのだと。

現に今千尋は、俺を見ることもなく……はぁちゃんに抱きついて泣いている。

樹に千尋とはぁちゃんの事を頼んで

俺は主治医の先生に、転院のお願いをしに病室を出た。
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