からめる小指  ~愛し合う思い~
「ちぃ、ゆっくりね!」

「千尋、部屋の事は良いから座れ。」

お盆を前に退院した千尋は、仕事の姉ちゃんに迷惑をかけたくないと

姉妹で話し合い、樹のマンションで残りの夏休みを過ごすことになった。

まだ松葉杖生活の千尋は、下の階の住民に迷惑をかける訳にいかないと

赤ちゃんのようにハイハイして移動するというので………

しばらく俺がこっちで生活して……夜だけ隣に帰って寝ることになった。

「コーヒーとカルピスで良いか?」

相変わらず料理の苦手なはぁちゃんに頼む訳にはいかず

お昼はピザを注文した。

「あぁ、久しぶりの美味しいランチ!!」

病院食に飽きていた千尋には、ピザで十分だったらしい。

「ねっ、ねっ!和君。
ちぃちゃんのお世話は、和君がするんでしょ?」

ワクワクしてます!!と顔に出てる樹は……何か爆弾を落とす気だ。

「あぁ。」

なるべく端的に答えると

「じゃあさ、じゃあさぁ!お風呂も??」

「「ゴホッ…………。」」

覚悟はしていたが………想像すらしていないところから爆弾を落とされた。

「アホ!」

「だって~、今は夏だよ。
ちぃちゃんだって、和君と一緒にいて臭いのは嫌だよね?
お盆開けまでギプスは取れないしぃ~」

「だったら私がちぃのお風呂、入れてあげるよ!」

はぁちゃんの有りがたい申し出に………

「遥はダメじゃない。
お盆は、おばあちゃんのお家に行くんでしょ?
推薦が取れた報告をしに行くから、俺と遊べないって言ってたでしょう??」

「……………ごめんちぃ。そうだった。」

唯一の頼みの綱が…………

二人して黙り込んだら

「じゃじゃあん!!」

訳の分からない効果音を口ずさんで、樹が何やら取り出した。

「お困りのお二人にプレゼント!!」

行事の度に迷惑な贈り物をする樹に、千尋とはぁちゃんも被害にあい

全員、ろくでもないプレゼントだと思っている。
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