からめる小指  ~愛し合う思い~
あれから一時間………

千尋はソファに座り何やら考え混んでいる。

…………………って………違うよなぁ。

何やらじゃない。

考え混んでいるのは……………さっき俺にされた行動だ。

父親の女が妊娠し………ショックを受けた彼女にする行動ではなかった。

自分の感情だけを優先して……

千尋に傷をつけてしまった。

………………………………………。

たぶん………考え混んでいるのではない。

涙を流していないけど………

泣いているんだろう。

今の俺は、慰めることも抱きしめる資格もない。

………………………………………。

千尋から少し距離を取って、見守るだけだ。




「……………先生。」

不意に呼ばれた。

「うん?どうしたぁ?」

声を掛けられたことに、ホッとする反面………

『ウチに帰りたい』と言われないかと………ヒヤヒヤする。

「まだ………怒ってる?
もう一緒に…………いたくない?」

そう言うと、溜まっていた涙が………ぽろぽろとこぼれ落ちた。

「…………………………………はぁ??」

泣いている千尋には申し訳ないが、意味が分からない。

怒るのも、一緒にいたくないと思うのも…………

千尋じゃないのか??

数学的脳の俺には

文学的に物事を捉える千尋の感情が………理解できない。

『気持ち』をくみ取ることは…………答えが1つとは限らないから………

苦手なんだよなぁ。
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