からめる小指  ~愛し合う思い~
コンコン

「失礼します。」

いつになく緊張気味の千尋は……

慣れない生活指導室にやって来て「どうぞ」と促されてから

椅子に座った。

いつも俺の部屋だと、自分の作ったクッションを抱き

俺の膝の間に座るのに。

クスッと笑う俺をひと睨みして

自分なりに考えてきた進路調査票を提出した。



第三希望まで書いてある。

目を通す俺に………チラチラこちらを見て気にしている。

それもそのはずだ。

昨日まで相談することなく、自分で考えていたのだから。

第三希望…………は、ウチの大学かぁ。

あれ程外部希望にしてたのに。

第二希望………もウチかぁ。

まぁ、それなら心配はないけど。

第一希望は…………就職??

はぁ?

思わずガン見してしまう。

「伊藤さん、第三と第二は良いとして……………
この第一希望は何??」

少しキレ気味に聞くと

「あの……………彼氏が結婚しても良いって言ってたから………」

えっ!俺??

「家庭に入るなら…………大学に行くよりも家族を大切にしたくて……。
でも、希望に『お嫁さん』とは書けないから……。」

プッ。

あまりの可愛さに吹き出してしまう。

何?その真っ赤な顔。

もしかして、逆プロポーズ?

「お嫁さん希望なんだぁ~
彼氏とはラヴラヴ?彼氏のこと好き?」

俺のからかいに、益々赤くなる。

「これは………進路指導じゃないよね?
今日、ウチにおいで。」

優しくポンポンと頭を撫で、彼氏の顔で諭す。

コクンと頷いて

「ありがとうございました。」と言って立ち上がった。

「尋、後でね。」

耳許で囁いて送り出すと真っ赤な顔を上げることなく出て行った。

これじゃ、俺に見せれないよな。

嫁希望なんて………ホント可愛い過ぎ。
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