からめる小指  ~愛し合う思い~
『やっと』………と言うべき日がやって来た。

千尋のギプスが取れるのだ。

初めはルールを決めたり、お互いが気を使ったりと

ギクシャクもしたけれど………

日々一緒に過ごす内にペースもつかめ、変な気を回す必要もなくなって

自然に生活が出来るようになってきた。

さほど難しさを感じなくなり、一見すると穏やかなのだが……

ギプスの足が痒いらしくイライラするみたいだ。

文句を言ってもどうにもならないことは、千尋も分かっているみたいで

我慢しているようなのだが………

夜が寝苦しいようで、いつもあくびをしている。

樹も小学生の頃に、サッカーをしていて骨折をしたことがあるから

その痒みが分かると言ってギプスのすき間に入る棒を持ってきた。

そこまでだと感謝されるのに

千尋をからかうのが楽しい樹は……

持ってきた棒を入れて掻いた後、匂って「臭い~」と笑い

イライラしていた千尋のひんしゅくを買い、『出禁』を言い渡された。

はぁちゃんが田舎に行った淋しさを、千尋で補おうとしたみたいだが

ものの見事に失敗したようだ。

ただ俺は……そんな樹が羨ましくもある。

俺と同じ年の樹は、千尋から見ればかなりの年の差だ。

教師でなくとも大人の男として距離が出来る。

現に俺は千尋の彼氏だが………

何処か遠慮している。

俺自身も、10歳離れた千尋は………

可愛いく、守る存在だと思い………対当には接していない。

なのに……

樹には全く垣根がない。

昔、俺達が仲間と騒いでいたままの関係を

千尋やはぁちゃんと築いている。

クラス担任であることすら忘れる程…………。

教師としてはどうかと思うこともあるが………

彼氏として、相手が自然に隣にいるのを見ると………敗北を感じる。

長い将来を思うと………余計に。
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