からめる小指  ~愛し合う思い~
「先生、先ずは何処に行くの?」

「観光は去年沢山したから……見たいところがあれば言って。
ゆっくりしようと思って……計画を立ててないんだ。
尋と相談して動こうかな?って。」

「だったら、水族館に行きたい。
普段は、見つかると困るから……二人で行けないもん。
デートの定番でしょう?」

「ヨシ!だったら、普段出来ないことを全部しようか。
プールで泳いだり、手を繋いで歩いたり……
ご飯を食べに行ったり、ショッピングしたり。
誰の目も気にせずに、堂々とデートしよう!」

感覚のズレも感じない。

やっぱり尋とは長く一緒にいられそうだ。

楽しい気持ちも、分かち合えそうだ。

美ら海水族館に到着すると入口には、ジンベイザメがお出迎えしていた。

「和君…………写真撮って良い?」

クリスマスに贈ったカメラには、俺の笑顔の写真が随分たまった。

「今日から二人の写真が撮れるんだけど?」

俺の提案に

「あっ!!」と言って笑顔を見せる。

いつもはお互いをこっそり撮って、後で見せ合うのが定番なのだ。

クラスマッチも運動会も文化祭さえ一緒におさまることはなかった。

教師と生徒。

禁断の恋愛を実感させられる。

「すみません、シャッター押して貰っていいですか?」

ベビーカーを押している、若い夫婦にお願いしてみる。

「あぁ、はい。
いきますよ!チーズ。」

「ありがとうございます。良かったら写しますよ。」

俺の言葉に、奥さんが持っていたカメラを渡される。

いつか俺達二人も、家族旅行をするんだろうな。

お礼を言って別れると

「やっぱり先生って、スゴい!」と感動していた。

………………??…………。

「だって~ 写してもらう人は沢山いるけど
お礼に『写しますよ』って言う人は、見かけないもん!」

俺の点数の甘さに笑いながら、手を取って歩き始めた。
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