からめる小指  ~愛し合う思い~
「あっ!」

楽しそうに石鹸を物色していた千尋が

俺の腕を引いて、店を出る。

……………………………………。


見覚えのある顔。

慌てて顔を隠し、もう一度確かめる。

………………………………………間違いない!千尋の母親だ。

若い男と一緒にいる。

去年、担任だった時に三者懇談をして会ったから間違いない。

他の保護者の顔は、うろ覚えだが…………

彼女の母親の顔は、ハッキリ覚えている。

千尋の肩を抱いて、離れる。

どうしてここで逢う?

どうして今じゃないといけない?

楽しいはずの旅行のラストを、こんな風に迎えるとは思わなかった。

神さまなんて信じてないが……………

今日は恨み言の1つでも言いたくなる。

青い顔の千尋。

頭の中は、どんな事を考えているのだろう。

慰めるどころか、声をかけることすら躊躇われる。

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